国技館で相撲を観る際に、一般とは違う入り口に案内される人がいます。茶屋通りと呼ばれる左右に相撲茶屋が並んだ華やかな通りがあり、出方さんと呼ばれる男性が席まで案内してくれるのです。
相撲茶屋ってよくわからない、という方も多いでしょう。
今回は、相撲茶屋について解説してみます。
- 相撲茶屋とは
- 相撲茶屋の業務とは?なにをしているの?
- 相撲茶屋の収益とは
- 相撲茶屋はどんな席を扱っているの?
- なんで相撲茶屋は存在するの?
- 相撲茶屋の闇!?
- 優先される客がいる
- 骨折りを渡す文化がある
- 力士の一族が経営している
- 維持員の仲介をしている
- 相撲人気が高い時期は切符が買えない
- まとめ
相撲茶屋とは
相撲茶屋の正式名称は「相撲案内所」。しかし、この名前はあまり流通せず、「相撲茶屋」、「お茶屋さん」と呼ばれることが多いです。
相撲茶屋は国技館に20軒あります。最初の入り口で切符を見せたあと、左側に進むとお茶屋さん用の入り口があり、左右10軒ずつ並んでいるのが東京場所の相撲茶屋です。
東京場所以外にも相撲茶屋はあります。
- 東京場所20軒
- 大阪場所8軒
- 名古屋場所2軒
九州場所には、相撲茶屋はないことになっていますが、実質相撲茶屋として機能しているお茶屋が1軒あります。
相撲茶屋の業務とは?なにをしているの?
相撲茶屋の主な業務は次のとおり。
- 協会から委託された切符を売る
- 切符の仲介
- 客の接待
協会から委託された切符を売る
相撲茶屋の業務1つめは、切符を売ることです。
これはみなさんもうご存じでしょう。国技館サービスのホームページからも切符の購入が可能です。
そのほか、相撲茶屋に電話をすることでも切符は買えます。
相撲茶屋は相撲協会からの委託を受けて販売していて、切符を売っただけでは利益になりません。チケットの売り上げは相撲協会に入ります。
切符の仲介
相撲茶屋の業務2つめは、切符の仲介です。
相撲茶屋は、企業や好角家など贔屓筋があり、そのコネを利用して「東京場所の切符を買いませんか」と仲介することも。
客の接待
相撲茶屋の業務3つめは、客の接待です。
自分たちの持ち分の切符を購入した顧客が来たら、座席まで案内をします。この案内をするのは、出方と呼ばれるたっつけ袴姿の男性です。(見た目は呼出にそっくり)
席への案内だけでなく、客からの御用聞きをする、お土産を用意するなど接待をします。
【御用聞きについて】
相撲観戦中に焼き鳥が食べたい! ということもあるでしょう。このとき、売店に行くために離席をして、大切な取組を見逃すわけにはいきません。相撲茶屋の出方に頼めば、席まで持ってきてもらえます。
【お土産】
東京場所は、切符代とは別でお土産セットを購入すると、弁当、焼き物などがついてきます。セットの場合は、中身は選べません。
相撲茶屋の収益とは
相撲茶屋はチケット販売だけでは、まったく儲かりません。
以前もこのブログで記載しましたが、委託で販売している立場なのです。
100万円分チケットが売れたとしても、その100万円は相撲協会に入ります。
では、どうやって収益を出すのかと言うと、出物です。
お土産セット、単品商品(飲み物、食べ物、タオルなどがあります)を買ってもらうことで収益を出しています。
地方場所だと、切符にお土産をつける代わりに、切符代を上乗せして販売する席もあります。なるべくお土産を買ってもらえるように、相撲茶屋も工夫しているというわけです。
このお土産の売上が相撲茶屋の収益になっています。
東京場所の相撲茶屋なら、15日間×年3回。
この日数の売上だけで収益を出しています。
たった45日間だけの仕事で収益を得るなんて…すごいですよね。(海の家みたい?)
一般的にはこんな短期間だけで生活はできません。副業など別の仕事をしているわけでもなく、相撲茶屋としては、場所でも売上だけでやりくりしています。
そのため、感染症の影響で観客数を減らしていた時期はかなり痛手でした…。
相撲茶屋はどんな席を扱っているの?
相撲茶屋は主にマス席を扱っています。国技館なら2階のイス席の一部の切符も売ります。
マス席の8割ほどは相撲茶屋の管轄です。プレイガイドなどで購入しても、指定の相撲茶屋に行きます。
切符の裏面に相撲茶屋の番号や屋号が書かれていたら、相撲茶屋の入り口を案内されることになります。
なんで相撲茶屋は存在するの?
さて、そもそもなぜ相撲茶屋は存在するのでしょうか。
こちらは桟敷方と呼ばれる組織が今のようになったとされています。歴史のことを書くと、キリがないので今回は割愛しますが、相撲に限らず、芝居でも茶屋があり、お茶や食べ物を提供しているのです。茶屋は古くからの名残だと思ってください。
この相撲茶屋、相撲協会にとってはありがたーい存在です。
なぜなら、自分たちの切符を売ってくれるから。
相撲茶屋は客や企業とのコネがあり、「いつも買ってくれる人」が存在します。相撲茶屋が押し売りしているわけではなく、いわゆる相撲好きな個人が相撲茶屋に電話をして、毎回買ってくれる、仕事の接待として切符をよく買う企業とのつながりがあるとうこと。
切符を売ることに特化しているので、協会は委託をしているのです。
相撲茶屋の闇!?
相撲茶屋については、批判的な意見を持つ方もいます。
ネットには闇があるとの声も…。相撲茶屋の闇とはなにか、まとめます。
(私は批判的な立場でも、強く応援する立場でもありません)
- 優先される客がいる
- 骨折りを渡す文化がある
- 力士の一族が経営している
- 維持員の仲介をしている
- 相撲人気が高い時期は切符が買えない
優先される客がいる
15日間通しで買う客には、優先的に販売しています。オフィシャルに切符を販売する時期よりも前に、電話での注文を受け付けていて、この時点で15日間通しで買う人、いつもお弁当を買うご贔屓筋などに先に販売しているのです。
1月場所のチケットなら、前年の11月上旬にはすでに席を押さえている人が多いです。
これは一般販売や大相撲ファンクラブの先行抽選よりも早いかと思います。
骨折りを渡す文化がある
骨折り(心づけ・チップ)を渡す文化もあります。これは賛否があり、今では渡していない方が多いようです。(旧Twitterでアンケートをしてみたところ、あまり渡していないことがわかりました)
個人的には渡しても・渡さなくても、どちらでもよいと思います。義務ではないので。
【国技館のマス席】相撲茶屋の出方さんの案内を断る方法やチップを渡すべきか解説 - 「1分でわかる大相撲」公式ブログ (hatenablog.com)
力士の一族が経営している
相撲茶屋は力士の一族が経営していることがほとんどです。
力士の妻や娘などが女将として働いています。茶屋通りで女将を見ることはあまりなく、接待してくれるのは男性の出方です。(呼出とそっくりな服装をしている男性)
一族といっても、力士の家族なら誰でもいいわけではありません。協会でも有力者の親族が経営していることがほとんどです。
維持員の仲介をしている
相撲茶屋は、維持員の仲介をしていることもあります。
土俵からすぐ近くの席に座っているのは、一般客ではなく維持員と呼ばれる人たち。高い料金を支払って維持員になり、協会に貢献している存在です。定員制のため、誰でも維持員になれるわけではなく、空きが出たら申し込みをして、維持員会で承認されたら維持員になれる仕組みですが、相撲茶屋が仲介することもあります。
社会的地位が高い人、経済的に余裕がある人とのつながりがあるのでしょう。
相撲人気が高い時期は切符が買えない
相撲人気が高い時期は、相撲茶屋から普段買っている人(通しで買うようなご贔屓筋)に切符が売られてしまうため、一般の方が買いにくくなる傾向があります。
闇といってもこのくらいかなと。
あとは、本場所15日間の売上のみで生計を立てていることですね。感染症の影響で協会も相撲茶屋も大きな打撃を受けましたが、それでもしのぎはしていないようなので、これは若干闇と言ってもよいでしょう。
まとめ
相撲茶屋について解説しました。
正式名称は相撲案内所で、主に次にような業務をしています。
- 協会から委託された切符を売る
- 切符の仲介
- 客の接待
マス席のおよそ8割が相撲茶屋管轄で、相撲茶屋間で縄張りがあります。
闇のように感じられる特徴は次の5つ。
- 優先される客がいる
- 骨折りを渡す文化がある
- 力士の一族が経営している
- 維持員の仲介をしている
- 相撲人気が高い時期は切符が買えない