大相撲をテレビ観戦しているとあまり見ることはないですが、現地観戦すると力士が力士になにかを渡しているシーンがあります。これは、力水です。
今回は、力士が口にする『力水』について解説します。
力水とは
力水とは、取組前に力士に渡される水のこと。原則として十両以上の取組、つまり関取の取組で力水をつけます。
呼出が桶に入った水を柄杓ですくい、力水をつける役目の力士に渡します。力水は、身を清めるためと言われています。
なぜ身を清めるのかは、もうご存じでしょう。土俵が神聖な場だから。神さまが宿るとされているので、土俵に立つ力士は身も心も清めて取組にのぞむのです。
ごっくんと飲んでいる?
この力水、力士は飲んでいるのでしょうか。
正解は、NO。飲んでいません。
つまり、かたちだけ。飲まずに、力水を口に含んだあと、ペッと吐き出します。このことから「力水を飲む」ではなく、「力水をつける」という表現をするのかもしれませんね。
さて、どこに吐き出すのでしょうか。
土俵は神聖な場とは記載しましたが、さすがに土俵に吐き出すことはできません。
力水をつけると、白い力紙(化粧紙とも呼ぶ)を渡されます。これで口元を隠しながら、タライに吐き出します。言い方は悪いですが、綺麗な行為ではないので紙で隠しているのだと思われます。
この力紙で口を拭いて、タライに捨てます。顔の汗を軽く押さえることも。
このシーンをテレビで見ることはあまりないと思います。チラッと映ることはあっても、吐き出すシーンはまず映さないでしょう。
力水を渡す人のルール
力水は、原則として直前の取組で白星を取った力士が渡します。
勝った力士は、すぐに花道を歩かず、次の取組の力士に柄杓に入った力水を渡すのです。「今やっと終わったのに」と言わんばかりに、ハアハアと息を切らしていることもあるほど。
しかし、直前で勝った力士が片屋にいないこともあります。この場合は、控え力士です。
ここでポイントになるのが、「負けた力士ではない」ことです。
次の取組の力士は、まだ勝負をしていないので、力水を渡すのにふさわしいのです。
負けた力士から力水を渡されるのは、あまり縁起がよいことではない、ということなのでしょう。
前の取組で勝った力士がいない、さらに控え力士がいないこともあります。この場合は力士の付け人が力水を渡します。
ただし、その日の取組で勝っている付け人か、取組がなかった付け人が渡すのです。このように、土がついていないことが重要です。
付け人が間に合わない場合は、呼出が力水を渡します。
付け人は肩肌脱ぎをする
本来は、
- 直前の取組で勝った力士
- 控えの力士
が力水をつけます。
結びの一番で、どちらもいない場合は、力士の付け人です。
付け人は、このとき浴衣を肩肌脱ぎの状態で渡します。(遠山の金さんみたいな感じです)
なぜ片肌脱ぎをするの?
付け人が力水を渡す際は、なぜ片肌脱ぎをするのでしょうか。
これはおそらく、本来まわし姿の力士(土がついていない)が渡すものだから。本来の姿に近い状態にするため、片肌脱ぎをしているのだと思われます。
付け人が間に合わない場合は、呼出ですが、呼出は肩肌脱ぎはしません。
理由は、呼出は力士のように裸が本来の姿ではないから。
付け人はギリギリまでモヤモヤ?
付け人は、浴衣を肩肌脱ぎするわけですが、このときインナーを着ているのは無粋なので、あらかじめ「肩肌脱ぎがあるつもり」で浴衣を着ています。
しかし、あまりにも早く肩肌脱ぎをして花道でスタンバイしているわけにもいきません。
本来直前の勝った力士が力水を渡すのですから、付け人がスタンバイしていると、直前の力士によっては、「オレが負けるのを見越して、付け人が待っているのかな」と思わせてしまいます。
直前の力士が負ける前提でする準備は、縁起よくありませんよね。
そのため、付け人はタイミングが難しいときもあるようです。
実際に付け人が間に合わず、呼出が力水を渡すこともあるため、片肌脱ぎを見る機会はそう多くはありません。
珍しい片肌脱ぎなので、「あれなんだろう?」とお客さんから見られることもあり、ちょっと恥ずかしい人もいるのだとか笑。
まわし姿よりも、片肌脱ぎのほうが緊張するという人もいたほど笑
(まわしのほうが露出多いのに…面白いですね)
力水の中身
力水は、ただの水ではありません。もち吉が製造している「力水」というものがあり、それを無償で提供されています。
ちなみに、もち吉の力水は一般の人も購入可能です。
まとめ
力水について解説しました。
力水は力士に渡される水のことで、これは口に含むだけで飲まずに吐き出します。吐き出すときは口に力紙を添えて。力紙で口まわりの水をふき取ります。
力水を渡すのは、直前の取組で勝利した力士。
勝利力士がいない場合は、控え力士。結びの一番などで控え力士がいない場合は、力士の付け人(片肌脱ぎ)です。
付け人が間に合わない場合は、力水を渡すのは呼出が担当します。